個人事業を始めるとき、最初に行う手続きが「開業届」の提出です。
正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、最寄りの税務署へ提出します。
「どこの税務署でもよい」というわけではないので注意。
書類自体は1枚で難しくありません。
記載項目の意味を理解せずに書くと、後の確定申告や各種手続きで不都合が生じることがあります。
この記事では、副業開始時の開業届の書き方を行政書士の立場から順を追って解説します。
副業を開始するときの疑問にも答えます。
開業届とは何か
開業届は、「私は個人事業主として事業を始めました」と税務署に知らせるための届出書です。
所得税法第229条に基づく法定の届出であり、提出しなかったとしても直ちに罰則があるわけではありません。
しかしある程度稼ぐ人にとっては節税ができません。
提出してないと青色申告ができず、最大65万円の青色申告特別控除を受けられないのです。
また、各種許認可申請や補助金申請の際に「個人事業主であること」の証明として求められることがあります。
開業届の提出は義務であり、かつ実務上のメリットも大きい。この2点を押さえた上で、書き方に進みましょう。
提出先と提出期限
提出先: 納税地(原則として住所地)を管轄する税務署
提出期限: 事業開始日から1ヶ月以内
「事業開始日」は自分で決める日付です。初めて売上が立った日でも、準備を始めた日でも構いません。ただし、青色申告承認申請書(後述)の提出期限と連動するため、実態に合った日付を選ぶことが重要です。
提出方法は3つあります。
1. 税務署の窓口に持参する
2. 郵便で送付する(控えの返送を希望する場合は返信用封筒を同封)
3. e-Tax(電子申告)でオンライン提出する
控えは必ず手元に残してください。金融機関での口座開設や行政手続きで提示を求められることがあります。
書き方:各項目の解説

提出年月日
書面は国税庁のページから取得できます。
提出する日付を記入します。期限(事業開始から1ヶ月以内)を過ぎた場合でも提出は受理されますが、青色申告の承認申請には別途期限があるため注意が必要です。
納税地
住所地を原則とします。事務所や店舗が住所地と異なる場合、「住所地」「事務所・事業所」「居所地」のいずれかを選択できます。自宅で事業を行うフリーランスであれば「住所地」で問題ありません。
氏名・生年月日・個人番号(マイナンバー)
戸籍上の氏名を記入します。屋号がある場合は後の項目に記載するため、ここでは本名のみです。マイナンバー(個人番号)の記載も必要です。提出時に本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+身分証明書)を持参または同封します。
職業
「ライター」「デザイナー」「コンサルタント」「システムエンジニア」など、実態に即した職業名を記入します。「フリーランス」は職業名ではないため不適切です。複数の業種を営む場合は主たるものを記載し、「その他」欄に補足することもできます。
屋号
任意項目です。屋号を使って事業を行う場合に記入します。屋号なしでも問題なく、後から変更することも可能です。
届出の区分
「開業」を選択します。廃業・移転・その他の変更の場合は該当する区分を選びます。
所得の種類
個人事業主の場合は「事業所得」を選択するのが一般的です。ただし、副業として取り組む場合でも、継続的・反復的に営む性質があれば事業所得とするのが実態に即しています。なお、所得の種類の判断は税務上の問題であり、不明な点は税理士に相談することをお勧めします。
開業・廃業等日
実際に事業を開始した日付を記入します。この日付が各種手続きの基準日となります。
事業所の所在地
事業を行う場所(自宅兼事務所の場合は自宅住所)を記入します。住所地と同じであれば「同上」と記入して構いません。
事業の概要
具体的な事業内容を記入します。「Webサイトのデザイン・制作」「企業向けコンサルティング業務」「ライティング・編集業務」のように、第三者が見て業務内容を理解できる記載が望ましいです。
給与等の支払の状況(従業員を雇用する場合)
開業時点では従業員を雇用しない場合がほとんどです。従業員なしであれば「なし」と記入するか、該当欄を空欄にします。将来的に人を雇用する場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を別途提出する必要があります。
青色申告承認申請書は必ずセットで提出する
開業届を提出する際には、「所得税の青色申告承認申請書」を同時に提出することを強くお勧めします。
青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除(電子申告の場合)が受けられます。白色申告との差額は年間の課税所得を大きく左右するため、手続きコストに見合う節税効果があります。
青色申告承認申請書の提出期限
| ケース | 提出期限 |
| 新規開業(1月16日以降に開業) | 開業日から2ヶ月以内 |
| 新規開業(1月15日以前に開業) | その年の3月15日まで |
| 前年から事業を継続している場合 | 申請する年の3月15日まで |
開業届と青色申告承認申請書は同じ税務署への提出となるため、窓口持参であれば同時に出せます。e-Taxでも同様です。
e-Taxを使ったオンライン提出の手順
e-Taxを利用すると、税務署に出向く必要がなく、控えもデータで保管できます。手順の概要は以下の通りです。
1. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」または「e-Tax ソフト(WEB版)」にアクセスする
2. マイナンバーカードとカードリーダー、またはスマートフォン(マイナポータルアプリ)を用意する
3. 「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択し、各項目を入力する
4. 電子署名を付与して送信する
マイナンバーカードを持っていない場合は、ID・パスワード方式を利用することもできますが、事前に税務署で手続きが必要です。
よくある疑問
副業でも開業届は必要ですか?
副業収入が年間20万円を超える場合、確定申告が必要となります。開業届の提出自体に所得の下限はありませんが、青色申告を選択したい場合は開業届の提出が前提となります。なお、副業が「事業所得」に該当するかどうかは、継続性・独立性・営利性など複合的な要素で判断されます。
開業届を提出すると会社にバレますか?
開業届の情報が勤務先に通知されることはありません。ただし、副業の収入が増えると住民税の特別徴収額が変わる場合があります。住民税を「自分で納付(普通徴収)」に変更しておくことで、会社の給与から引かれる住民税に影響が出にくくなります。確定申告時に選択できます。
すでに事業開始から1ヶ月以上経過している場合は?
期限を過ぎても提出は受理されます。ただし、青色申告承認申請書には別途期限があり、当年分の青色申告ができない可能性があります。まず税務署に状況を確認することをお勧めします。
行政書士から見たポイント
上司が「副業やっていいですよ」と言われたときに、今回記事で紹介した開業届を出しますが、
重要なのは社内で揉めないことです。
そのためには社内の規定や雇用契約をよく読んでおきましょう。
今揉めなくても、上司が忘れてしまうかもしれません。
上司が変わってしまうかもしれません。
副業していいよ、と言われた証拠をメールなり、チャットなりで記録を残しておくといいでしょう。
まとめ
開業届の記載項目は多くありませんが、提出タイミングと青色申告承認申請書との関係を正確に把握しておくことが重要です。
– 提出先:住所地を管轄する税務署
– 提出期限:事業開始から1ヶ月以内
– 青色申告承認申請書は同時提出が基本
– 控えは必ず手元に保管する
開業届は事業の出発点となる書類です。記載内容に不安がある場合は、行政書士や税理士に相談しながら進めることで、後々の手続きをスムーズに行うことができます。
行政書士コメント
行政書士の坂本倫朗です。
開業届は「出すだけ」と思われがちですが、職業欄や事業概要の記載が後の許認可申請や補助金申請で照会されることがあります。
実態に即した丁寧な記載を心がけてください。また、青色申告承認申請書の提出を失念するケースが非常に多く見受けられます。
最近、副業の相談を受けましたので、副業に関しても記載しています。
法務の確認と、記録の重要性についても書きました。
あとで言った、言わないとならないように証拠を残しておくと良いですよ。
当事務所では開業に伴う法人登記や、契約書作成、許認可取得のサポートも承っておりますので、お気軽にご相談ください。

