資金繰りでファクタリングを利用する人は、急いでいます。
ファクタリングサービスはたくさんあるので、
「たくさんのファクタリングサービスで同時に審査してもらって、審査が一番早いところにしようかな」
というアイデアを思いつくかもしれません。
でも、それ、横領罪になる可能性が高いです。
この記事では、ファクタリングサービスを利用するときに知っておきたい法律(契約)について、なるべく易しくお話をします。
知識を身に着けて、ファクタリングサービスを安全に利用しましょう。
1つの売掛債権を2社に譲渡するのは犯罪
2社(あるいはそれ以上)のファクタリングサービスを利用して、請求書(売掛債権)を先払いしてもらったら、それは、請求権という1つしかない権利をたくさんの会社にあげることになります。
これは横領罪という刑事罰で告訴されることや、ファクタリング会社から民事訴訟を起こされる可能性が高いです。
先に契約した1社に売掛債権をあげた時点で、もうあなたは売掛債権の持ち主ではないからです。
人のものを勝手に他の人にあげたら、犯罪となるのは当然のことですよね。
1つの売掛債権について、2社と契約してしまっていることが問題です。
同じ取引先宛の請求書でも、請求内容が違う別物であれば、問題ありません。
A請求書をファクタリング会社Cに、B請求書をファクタリング会社Dに先払いしてもらうのは問題ないのです。
ひとつの売掛債権を2社に審査してもらうだけなら問題ないか?
「契約せずに、審査だけお願いするんだから、1つの請求書を複数の会社に提出しても問題ないでしょう?」
と思っている方もいますが、これも問題があるのでお勧めできません。
これまでのファクタリングサービスは、「申込→見積→審査→契約」という流れで進めていました。
この流れだと、たしかに審査の後契約するので、2社に審査してもらったあと、1社とだけ契約するということが、理論上は可能です。
(ファクタリング会社の調査でばれてしまう可能性が高いです。お勧めするものではありません)
ところが、yup(ヤップ)先払いなどの最近のサービスでは、審査に通ったときに自動的に契約が成立してしまうのです。
ちょっと難しくなりますが、yup(ヤップ)先払いの利用規約の一部を引用します。
(yupさんは先進的な例として参考にさせていただいています。)
引用
2.当社は、当社所定の基準により、前項に定める申込内容、対象請求書その他の情報を審査し、対象債権の譲り受けの可否を決定し、その結果を当社所定の方法により利用者に通知します。
3.当社が前項の通知を行った場合には、当社と利用者との間で対象債権の全部又は一部にかかる譲渡契約が成立します。
yup(ヤップ)先払いの利用規約「第3章 本サービスの利用」より引用
つまり、yupさんが利用者に「審査に合格しました」ってお知らせした時に契約が成立しますよと言っているのです。
「審査に通った後、利用するかどうか考えようかな」という、のんびりしたことは言っていられないのです。
2重譲渡したか、ファクタリング会社でチェックされている?
利用規約やプライバシーポリシーを見ると、「他の会社で審査していないか」を各会社でチェックしていると考える方が自然です。
ファクタリングサービスの会員登録するときは、サービス提供会社がそういうチェックをできるな契約を結んでいます。
ふたたびyupさんを引き合いに出しますが、yup(ヤップ)先払いのプライバシーポリシーには以下のように記載があります。
引用
当社が取得した個⼈情報は、次の⽬的の範囲内で利⽤いたします。
(中略)
(5) 当社サービスの利用の可否の審査のために、当社が当該審査を委託した第三者に提供するため
yup(ヤップ)先払いのプライバシーポリシー「2. 利⽤⽬的」より抜粋
つまり、「審査のために、利用者(あなた)の個人情報を第三者(別の会社)に提供しますよ」といっています。
つまり、このポリシーによって、yupさんは、「あなたが他のファクタリングサービスを使用していないか。使用していたら、どんな内容で使っているか」を確認することができるのです。
利用手数料率が低いところは、横領や詐欺などの犯罪を未然に防ぐ仕組みが出来上がっています。
そのため複数のサービスで審査を依頼すると、審査の途中でわかってしまう可能性が高いです。
よく知らないまま二重に審査申請して、審査の途中であなたの二重申請がばれたら、ファクタリングサービスに文句をいうようりも、むしろ犯罪を未然に防いでもらったことに感謝すべきです。
ただ、未然に防げたとしても規約違反で退会処分となってもおかしくない行為です。
まとめ
他所のブログで、「まとめて複数社にファクタリングの審査を出しましょう」的なことを書いているブログをみつけました。
「すごく危険なことを書いているなぁ!」
と思ってこの記事を書きました。
昔ながらの1つずつ契約書に印鑑を押してやり取りするサービスと違って、最近のサービスでは、請求書を審査に出してしまうと、その後、自動的に契約が結ばれてしまいます。
もっとも、複数社に会員登録をする分には問題ないですし、フリーランスの人が使えるyupやFreeNanceなどのサービスは、むしろ何かある前に事前に会員登録しておく方が備えができて安心です。
ですが、複数社に会員登録するのと、複数社に同じ請求書を審査に出すのでは、まるで話が違います。
よくサービスの利用規約を読まないままで、同じ請求書を複数社の審査に同時申請するのはやめましょう。
ファクタリングサービスによって契約形態が違いますので、「複数の会社に審査を出した=即犯罪」というわけではないですが、
もしそれをやるのなら各会社の契約内容や利用規約を熟読するべきですし、
そもそも熟読する時間も気力もないのであれば、欲張らずに一社に絞って審査に出してみることを強くお勧めいたします。