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補助金とファクタリングサービスの併用なんてありえない

「補助金事業の費用をファクタリングで賄いましょう」という提案をされる方がいます。
そうした意見に、私は強い違和感を覚えます。

この記事では、なぜ補助金事業とファクタリングサービスを併用すべきでないのかを解説します。

ファクタリングサービスと補助金を併用するのはおすすめしません

ファクタリングサービスが、あると非常に助かる、社会的に意義のあるサービスであるのは疑いようのないことです。
ただし、ファクタリングサービスの本質的な役割は、「急場のしのぎ」、「緊急時の救済」です。

ファクタリングサービスを継続的に利用して、本来受け取れる収益を削ることは事業の成長に急ブレーキをかけます。

まず、事業によって収益率は違います。収益率の低い建設業や飲食業は、絶対に繰り返しファクタリングサービスを利用してはなりません。

たとえば、エンジニアやwebデザイナといった職種であれば、毎月の支出は通信費や家賃の他にはあまりかからず(勉強する時間コストはかかるかもしれませんが)、
フリーランスとして一人で仕事を請ける場合は、人件費もありません。
そのため、相対的に利益率が高く、ファクタリングサービスを利用して事業を回そうとすれば、回るのかもしれません。

ところが、建設業や飲食業などにの職種には仕入があり、外注や雇用をしないとと回らないことが多い業態です。
こうした建設業や飲食業の収益率は10%~20%であるため、ファクタリングサービスの手数料率10%~20%を利用すると、ファクタリングサービスで買い取られた売掛金については利益がほぼ0かマイナスになります。

エンジニアやwebデザイナーにしても、ファクタリングサービスの利用が収益を下げてしまうのは間違いないですから、どちらにしても、本来受け取れる収益をファクタリングサービスで減らすことを当たり前にしてはいけません。

ファクタリングサービスを利用するほどカツカツになったら、事業計画を立てるチャンス

ファクタリングサービスを利用して毎月やっていけるか、いけないかの「やっとやっと」の状態になったときは、事業計画を立てる(見直す)チャンスが来たと考えます

事業計画とは、(1)今現在のご自身の事業の数字の見直しをして、(2)5年後、事業が成長した後の詳細な数字を作成することです。

今、カツカツの人で、事業計画を作ったことがない方はぜひ事業計画を作ってみてください。
創業時に融資を受けるために創業計画書を作った方も、今の足元の数字を確認して、これから5年間の事業計画を立てられてみてください。

事業計画の作成については、以下の書籍が参考になります。
マンガで書いてあるので読みやすいです。

私は、計画を立てた時に、なんでもかんでも仕事を請けることをやめ、他の人を紹介するようにしました。
今の足元の数字を見た時に、なんでもかんでも仕事を請けていると、利益が延びないことが自覚できたからです。

ちなみに、今までたくさんの事業者に会いましたが、事業計画を作ったことがない人の方が多かったです。

ファクタリングサービスを利用したら、次の行動はぜひ事業計画策定を!

私の考えでは、ファクタリングサービスと事業計画の再設定は「セット」です。
私のブログの読者には、ファクタリングサービスを利用して、「ああ、今月もなんとか助かった」ということを続けてほしくありません。
そのため、この状況をどうやって改善していくかまでをブログの記事で提案していきたいと思っています。

「10年後にFIREしたいな」
「ノマド生活を送りたいな」
「老後の心配をしたくないな」
「分かりやすくお金持ちになりたいな」
こんな夢の実現には、事業計画が道しるべになります。

夢の実現のために、5年後の目標を立て、その実現の細かい数字を設定しましょう。
体力があるなら5年後の目標を年商5000万としてもいいでしょう。
成し遂げたいことを落ち着いて考えるためにも、休日の半日ぐらいは時間を取ってほしいのです。

さて、「5年後に年商5000万までいくぞ!」という目標は大事ですが、その目標設定で終わらせずにもう一歩進めましょう。
休日に半日時間を取って、どういう道をたどって年商5000万にいくか、もう少し詳細に考えていただきたいのです。

まず、今の事業全体でよくないところ、頑張っていてもお金が増えない商品やサービスがないか考えます。
そのあと、5年後年商5000万になったとき、どのような商品構成で、何がどこで、どれだけ売れて、費用がどれだけかかり、収益がどれだけでるかを考えます。
もちろん、この達成のために自分が年間何時間働かないといけないかも、考えておく必要があります。

事業計画にあった補助金を使うのが鉄則です

さて、補助金の話に戻ります。

補助金はご自身の事業に合うもものと、合わないものがあります。
補助金はご自身で作成した事業計画に合うものを選ぶべきです。
「補助金は2/3を国が負担」という側面にだけ引かれ、「とにかく安く買えるなら、何か補助金で使えるものを買おう」という考えお金を使っていくことは、事業計画を無視した出費となります。

申請時には、事業計画を書類として提出する必要があることにも、注意が必要です。
事業計画に合わない補助金に申請しようとして、むりやり補助金に合うように事業計画をねじまげて修正しても、採択される可能性が下がります。
結局、「無理して申請書を徹夜して作ったけど、採択されずに骨折り損だった」という結果になりかねないのです。

もし、補助金が魅力的に見えても、「事業計画の計画に近づける使い道になっているのかな?」
「行き当たりばったりの補助金申請になっていないかな?」
と振り返ってみてください。
頑張っても収益と費用がトントンの事業に、補助金で備品を買いたすようなことをしていないですか?
安く買っても、それは安かったと言えるのでしょうか?

補助金の方に自分の事業を合わせていくと、あまりいいことがありません。

補助金に合わせてお金を使っていくのではなく、事業の将来性にお金を使っていくべきです。

補助金とファクタリングサービスの相性が悪い理由

補助金とファクタリングは、次の2点から考えて、相性がよくありません。

  1. 補助金事業は時間がかかるのでファクタリングに頼ることがない
  2. ファクタリングサービスに頼らないといけない状況なら、補助金利用より事業改善が先

順番に詳しく解説します。

①補助金事業は時間がかかるので、ファクタリングに頼ることがない

補助金を活用する場合の時間の流れは、「申請期間に申請書を作って提出」→「その後採択されたらお金を使って事業を行う」「事業完了後に補助金を受け取る」という順番です。
多くの補助金事業は「補助金申請してからすぐ事業」ということではありません。
融資を検討する期間は、十分にあるのです。

融資を受けたほうが、ファクタリングよりも資金繰りを良くします。
補助金の事業資金にファクタリングサービスを利用する理由は、ありません。

「融資で負債をもちたくないから、ファクタリングサービスで賄いたい」
という考える人があるとすれば、その人にはファクタリングサービスより自己資金で賄うようにすることをお勧めします。
補助金とは費用の一部を国が助成することであり、その国に助成してもらうお金の一部をファクタリングサービスで削ってしまうのは補助金の効果を弱めることにもなり、疑問です。

➁ファクタリングサービスに頼らないといけない状況なら、補助金活用より先に事業改善をする

もし、補助金事業の申請時にファクタリングサービスで賄おうと考えている人がいたとすれば、
債務超過の改善を期待してのことかもしれません。

しかし、そのために収益を削ってしまうことになるわけですし、このような判断をされるということは、
明日の事業がどうなっているかもわからない、その日暮らしの経営状態の人であるということになります。
事業を人の体でいえば、大量の血(お金)が噴き出ている状態であるのです。
そんな相談者がいたとすれば、私は、補助金を活用して新たに血を出すよりもまず、止血をすることを提案します。

具体的には、資金繰りの改善策の提案として、次の内容を実践してもらいます。

  • 売掛金の徹底回収
  • 買掛金の支払いサイクルの見直し
  • 売掛金の回収サイクルの見直し
  • 前払、着手金をもらうよう見直し
  • 費用の徹底的なカット
  • 不良在庫の処分
  • 月別の損益計画、資金繰り表を作成
  • 銀行に融資やリスケジュールを相談

大出血したまま補助金の導入を考えるよりも、事業を安定させよく眠るためにやるべきことがあるのです。

まとめ

まとめはシンプルですが、
事業計画が立つまで補助金を活用するべきではなく、事業計画に基づいて動いていれば、補助金を活用するときにファクタリングサービスを利用することはまず起こり得ないでしょう。

ファクタリングを利用したくなったら、事業計画を立てるチャンスです。
事業計画を立てて、その計画に基づいて動いていると、短期的にころころ方針を変更することも減ります。
そのほうが、周りも迷惑をかけないし、ご自身も消耗しなくなります。

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