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納期に間に合うような契約締結をしよう。


フリーランスのディレクターであれば、契約の締結も自分で行います。
でも、契約書の内容が不利だった時に、どのようにすればいいのでしょうか?

契約書の文面が、案件の未来を左右する

仕様やデザインは、ころころ変更されるのがIT業界の常。

しかし、お客さんの都合で、間に合わななくなるようなタイミングで、間に合わなくなるような仕様変更がされるのを見過ごしてはいけません。
そこがディレクターの頑張りどころです。

「このままでは納期に間に合わなくなる」という局面にきたら、以下の3つを提案します。

  1. 納期を伸ばすこと。
  2. 間に合うような仕様に変更すること。
  3. 無理をするスケジュール進行の場合、別料金を請求すること。

と、ここまでは、誰でもやることです。

納期に間に合うような契約締結をしよう。

上記の3つを提案しても、「最初の契約ではそんな変更は認めてないから」と突っぱねられることもあります。
納期の変更について承諾してもらったとしても、納期の遅延を理由に、あとから支払額の減額を提示されることもあります。
こうなったらトラブルです。

お客さんが一度は承諾したとしても、納期遅延は受託側にとって決定的な「弱み」です。

「納期に間に合わないのは承諾したけど、バグが多すぎるのはおかしい」とかなんとか理由をつけて減額を提示されたり。
大なり小なりお客さんに非があったとしても、ひとたび納期遅延をおこせば、トラブルはさけられません。

それと、「仕様が変わるときは、電話でなく、メールで証拠を残している」と言う人もいますが、
契約書に比べて、メールの文面と言うのはとても力が弱いのですよ。

究極、契約書に書いてあることが強いんです。

納期に間に合わなくなるような仕様変更の提案は、珍しいことではありません。
先回りをして、上記の3つが提案できるような契約内容になっているか、必ず確認しておきましょう。

そして仕様を変更するときは、メールではなく、押印付きの(しかも相手のトップの押印)文書を残すことが大事なんです。

こんな契約内容を提案しよう。

あとから不利にならないように、契約内容に気を付けます。
十分でないとしたら、追加の提案も考えましょう。
そもそも納期が遅延しないように、以下の内容を提案してはどうでしょうか。

お客さんの協力が不可欠であること。

納期に間に合わなくなるような案件は、お客さんの返答が遅いです。
相手の担当に文句を言うだけですましてはいけません。
連絡の遅延には責任があることを契約書に入れましょう。

本業務の円滑な実施のためには、発注者は、受注者が都度要請する本業務の円滑な遂行に必要な作業について、迅速かつ的確な対応を行うものとする。発注者がかかる対応を遅延しまたは実施しない場合若しくは不完全な実施であった場合、それによって受注者に生じた損害の賠償も含めて、発注者が責任を負うものとする。

もちろん、こんなことを入れるのであれば、制作側にもそれ相応の覚悟が求められますよ。

仕様の変更について、合意を必要とすること。

仕様の変更内容が、委託料、作業期間、納期、またはその他の契約条件に影響をおよぼすものと発注者、受注者の双方が判断した場合は、仕様の変更に関して合意をすることをもって、仕様の変更を行うことができる。

協議の項目をいれておく。

法的には何の拘束力もないですが、契約時に想定していないことについても、強者が一方的な論理で決めてしまわないように、次の内容をいれておくといいです。

本契約に定めのない事項、または本契約の解釈について疑義が生じたときは、甲乙誠意をもって協議の上解決する。

撤退も考慮に入れる

世の中には、強引な手法で制作者を「使用する」企業が多くあります。
契約時に先方の契約内容に口を挟むと、いい顔をしないかもしれませんが、
後でもめる方がよっぽどしんどいし、制作側にも迷惑をかけます。
契約段階でいうべきことははっきり伝えましょう。

そして、うまく折り合わない案件は断る勇気が必要です。

余談になりますが、私の友人のCGデザイナーは、「必ず納期を守る代わりに、相手にも必ずスケジュールを守ってもらう。
それができない相手とは取引しない。」
と言っています。
たいした覚悟です。それでもお客さんは着いています。
自分が覚悟を決めると、同じようなお客さんが付くんですねー。

労働環境をブラックにしているのは、ブラックになってもしょうがないような契約内容に甘んじている、あなた自身かもしれません。
ブラックな契約内容を断れるようにするためには、日々のスキルアップとアピール力が大事だと感じます。

本記事は、2018年06月25日公開時点での情報です。ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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