契約書 行政書士

契約書のチェックをすることになったらどこを見る?ポイント4つ

こんにちは。坂本倫朗です。

僕は法務の仕事をしていますが、「契約書のチェックやりたくない」
という声をよく聞きます。

そんなお悩み(?)やストレスを少しでも軽減できたらと思い、今回は、

「はじめて契約書をチェックするときで、時間がない時でも、最低限ここをみてもらえれば」
というポイントをお話しします。

苦手な契約書のチェックを任されてしまったら

契約書のチェックについて話し合っているとき、
「そもそも、契約書のチェックをやりたくないんだ」
という、法務の仕事をしている僕にとっては身もふたもないことを言われることがあります。

多少ショックをうけながら、
そういう僕も、この仕事を始める前は、契約書をよく見ずにハンコを押していたので、
あまり人のことを言える立場でもありません。

契約書をチェックすることが大事であることは、皆さん知っていると思います。
それでも契約書が受け付けられないのは、どうしてなんでしょうか。

契約書が受け付けられない点

契約書が受け付けられないと思っている人には、次のことが共通しているようです。

本業と関係ない時間を使うのが嫌だ

一番はこれが原因だと思います。

みなさん、時間に追われて忙しい。

昔僕はプログラマーとして開発をしていましたが、今より何倍も忙しかったし、トイレに行くほかは仕事していた気がします。

「こんなに忙しいのに契約書なんか、見ていられない」

と思うってしまうことも、(推奨はしませんが)自然なことであると思います。

見慣れない、難解な法律用語と文書

僕の友達や知り合いは、エンジニアやウェブデザイナーがたくさんいます。

ムチャクチャ優秀な人たちです。

その人達ですら、契約書の文章について話すと、

「メダパニの呪文をやめてくれ」

と言われます。

僕は慣れているので、あんまり違和感なく文章として読めますが、
通常の日本語に比べて一文が長く、
使われている言葉が難解なので、より受け付けない文章と感じられるのではないでしょうか。」

ほとんどの社長はノールック

創業して5年の社長とお会いしたときに

「これまで契約書をちゃんと用意したことなかったし、渡された契約書も読まずにハンコを押していた」

という告白をされました。

そんな社長がたくさんいることを、僕は知っています。

ほとんど仲間うちで仕事をする社長さんは、すべて口約束でやっている人がたくさんいます。

「大きい会社だからちゃんとしているだろう」という罠

仲間内では契約書を交わさなくても、大きな企業だと契約書を渡されることがあります。

「大きい会社だからちゃんとしているだろう」と思わないでほしいのです。

僕は毎年50件ペースで契約書チェックの依頼や作成を受けているので、断言できます。

大企業が契約相手に優しい契約書を作ってくれていう思い込みを持たないことです。

むしろ、大企業ほど自社に有利な契約書をかけて圧力をかけてくるところが多くあるように思います。

もめごとになっている例

内容を確認することなく契約した結果、次のようなことが、実際に起こっています。
制作会社側に怒ったことを紹介します。

納期直前に仕様の変更依頼を受ける

一番の「あるある」は、納期直前に仕様の変更を依頼されることです。
この点については、「お客様のいう事だから」と承諾している制作会社が多いです。

しかし、なかには、延々と仕様変更、仕様追加を迫る、お客さんともよべない人もいるのです。

納期が延々と先延ばしされる

「素材が提供できない」
「確認が完了しないとプロジェクト終了とは言えない」
といった、発注者の都合で、どんどん納期が先延ばしされることがあります。

仕事はどんどん終わらせていかないと手が足りなくなる制作会社にとって、大きな問題となります。

支払いも延々と先延ばしされる

先ほどの納期の変更と関係しますが、
「納品が完了するまでお金は払えない」
と支払いを先延ばしされたということもありました。

突然、契約を解除される

よりダメージの大きいものは、
「ごめんなさい、上(社長)の方針により、いったんこのプロジェクトを保留とさせてください」
といって、実質的に契約が解除されてしまうことです。

以上、全部の事例は実際に僕のお客さんが体験した実例です。

契約書のチェックにはポイントがある

こんな問題をかかえると、時間もお金も損をします。

契約書をしっかりチェックすることは、将来の時間やお金を守る重要な仕事なんです。

ぜひ契約書には目を通してください(もちろん大企業の契約書だけチェックすればいいという事ではありません)。

できれば穴が開くように見てほしいですが、時間がないなら最低限、つぎのポイントをチェックしてください。

POINT1:何をいつ差し出すのか

何を差し出すかについては、たとえば「第○条 業務内容」といった項目をみて、何の仕事をするか確認します。
業務内容に「その他関連する一切の業務」とか入れてあったら、仕事は無限に増えていくと思ってください。

仕様と、納品についても、いつ仕様が確定するのか、いつ納品をするのかがはっきりとしているかを確認します。

POINT2:何をいつ受け取るのか

受け取るものが対価であれば、「第○条 委託料及びその支払方法」といった項目を確認します。

支払期日がなく、「直ちに支払う」としている場合は、要注意です。
「直ちに」は法律用語ではありますが、これは支払う日にちをはっきり書いていないのと同じです。

できる限り「○○日まで」「請求月の翌月末日まで」といったように、明確な日にちを指定してあるか確認します。

POINT3:約束を変更するときの条件

いったん決めた仕様を変更したり、機能を追加したりするときは、
発注者の都合で好きに決められるようにするのではなく、
「協議のうえ文書やメールで決定する」ように書いてあるのが望ましいです。

それから、変更するときは納期と製作費を変更できるようになっているかも確認しておきます。

POINT4:万が一、もめてしまったときのリスクを減らす

ポイント4は多岐にわたるのですが、重要なところを一つだけ紹介します。

もしバグがあった場合、どんなレベルまで修正作業を請け負うか、
また、いつまで修正作業をするべきかといったことは、
「第〇条契約不適合責任」(瑕疵担保責任)という項目に記載があります。

今の民法では、バグが見つかった時点から半年以内であれば修正等に応じる義務があります。
このルールでは、実質的に永遠に修正義務が生じるのと同じことになります。
仮に50年後に「はじめてバグが見つかりました」と言われても、修正する義務が生じるのです。

プロジェクトが短期的なものであればそれでもいいと思いますが、
システムのように長期間使うものであれば、その表現は「納品から半年に限り修正に対応する」といった表現へ修正してもらった方がよいかもしれません。

まとめ

契約書をみていない社長さんは多い。

いざトラブルが生じたときに、はじめて契約書の大事さがわかるものですが、
そうなってしまっては遅く、そこから多くの時間とお金を無駄にします。

何より、楽しくありません。
(たまに火消し役で真価を発揮する人がいますが、そんな人は別として)

契約書をチェックするときのチェックポイントについて、最低限として4つを紹介しましたが、
なるべく時間を取って、表現に不利な点が含まれていないか確認してください。

契約書を交わすのは年に何回もないかもしれませんが、
やっているとポイントが絞れてきます。
慣れると1時間もかかりません。

契約書は「ここからここまでは権利があります」という線引きです。
線引きがあることによって、もめる可能性が減り、円滑にビジネスが進みます。
それは、取引相手も助けることになるのです。

契約書チェックは、有益な仕事をしている時間ですので、お忙しいとは思いますが、
ぜひ時間を取ってください。

それでも時間が足りなかったり、チェック内容に不安が残る場合は専門家にご依頼してください。
うちの事務所でもチェックしてますし、たまに経営者・フリーランス向けにセミナーもしています。
チェックを依頼すると、専門家がどこを見ているのかがわかって、勉強になるはずです。

坂本倫朗行政書士事務所の契約書チェックはこちら

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