私はフリーランスを14年間続けています。
フリーランスを続けていくには、周囲との協力も大切ですが、
それと同じくらい、心の調整が大切です。
心の調整が上手でないと、フリーランスは続けられません。
フリーランスの心の調整について、「アドラー心理学」を活かす方法について記します。
フリーランスは内面との戦い
フリーランスには、もちろんいい面もたくさんあります。
自分で決められることが多いのは、一番の魅力です。
何を仕事にして、何を売るのか、すべて自分で決められるのは気分がいいものです。
しかし、フリーランスの仕事の多くは受注産業です。
受注産業であるがゆえの苦しみがあることも事実。
フリーランスのつらいことをいろいろ上げると、次のようなものがあります。
金銭面の不安
毎月安定して仕事が入るフリーランスは、私の周りにはいなかったですね。
超絶優秀な人も、十年という単位でみると、資金繰りに困っていた時期があったように記憶しています。
特に大きな案件を引き受けている人ほど、売上はジェットコースター。
大きな案件を引き受けていると、他の仕事を受けている時間がなくなります。
だから、受けている仕事に直に生活を左右されます。
請負契約では、仕事が完了したときに代金を請求することが、民法で規定されています。
お客さんの都合で納期を延期されると、そのままキャッシュフローに影響します。
私も、月末に何度か「グハァ!」という、辻斬りにあったような声をあげました。
(ところで、請負契約でも、交渉によって前金や着手金をもらうように変更できますが、それはまた別の話。)
キャッシュフローに困ると、交際費に困るようになります。
手持ちがないので行けなかった結婚披露宴、たくさんありますよ。
「仕事は目いっぱいあるけど今月請求できるものがない。」
というのと、「お金も仕事もない。」
どっちも経験しましたけど、これは甲乙つけがたいほど、どっちもつらいです。
全部自己責任
フリーランスの多くは一人で仕事を請け負います。
仕事は全部自己責任です。
フリーランスを始めた最初のころ(2003~2005)は誰かに聞くこともできず、苦労しました。
いまはネットにも専門家に質問できる(しかも無料のもある!)サービスがたくさんあっていいですね。
また、私は、ほぼ業務委託契約書不履行の状態になりかけたことがあります。
そのときは、周囲の人に助けていただきました。
もしそのとき助けてもらえなかったらと思うと、恐ろしい。
あと、私は体が丈夫でしたが、これから先はわかりません。
「私が倒れたら終わり」という状態にならないように気を付けて仕事しています。
女性は、避けられないことですが周期的に体調を崩す方が多く、
そのことも加味して、どんなスタイルでフリーランスをやっていくのか、考えておいた方がいいですね。
周りの理解をえ難い
はたから見ていると、家にいて、しかも座っているだけなので、
超絶なプレッシャーの中で仕事をしているとは理解されにくいです。
「起きている時間はずっと仕事」、「ハイプレッシャー」という状況を土日もなく続けている中、
親しい人でも、私が何をしているかわかってないので、
厳しい言葉をいただいたこともあります。
「追い込まれる状況を作ったことについては自分に責任がある」と自覚しているんで、
大変な時って、基本的にへこんでいるんですよね。
へこんでいるときの非難はこたえますね。
孤独
なんだかんだいって、これが一番つらいかもしれませんね。
独身だと、長く一人の時間を過ごすことになります。
独身でフリーランスのあなた。大変じゃないですかね。
元気にしてますか?
この孤独は、今、付き合っている人がいるかどうかは、あまり関係がないように思います。
孤独感の処理に加え、自己管理を自分でやることになります。
私の過去も含めて、独身のフリーランスは食事と睡眠がめちゃくちゃです。
生活がめちゃくちゃだとモチベーションも下がるんですよね。
アドラー心理学とは
アドラー心理学は、アルフレッド・アドラーが創始した心理学で、一言でいえば「勇気づけ」をする心理学です。
もともと臨床心理から出発している心理学であり、科学として学問的に発展することより、
現場で役に立つことを重視している心理学です。
特に、対人関係に対する問題を解決するのに向いている心理学です。
しかし、アドラー心理学の理論は、内面を整理し、自分を勇気づけるのに有効な理論でもあります。
だから私は、自分と向き合う時間が多いフリーランスに、このアドラー心理学を勧めたい。
フリーランスの基礎知識の一つとして身に着けてほしいと思うのです。
アドラー心理学は、基本五原則
アドラー心理学は、基本五原則をあげています。どれもフリーランスに役に立つ考えです。
自己決定性
アドラーは、「人間は自分自身の人生を描く画家である。」と述べています。
どんな場合でも、人間には自分の生き方を選択し、決断する自由意志の余地があります。
「今がどんなに大変か」とばかり考えるのではなく
「これからどうするか」により強い焦点をあてます。
この「これからどうするか」という言葉は、苦しい状況にある時、冷静さを取り戻させてくれます。
目的論
人間は目的を達成しようとして行動します。
目標とは、痩せたい、成功したいといった表面的なものではなく、もっと根源的なものです。
根源的なものとはたとえば、次のようなものです。
「安心していたい」「人と協力したい」「楽しくありたい」「楽をしたい」「人から認められたい」「優越を感じたい」「美しさを感じたい」・・・。
人生全体として、人はその人がもつ目的に向かって行動を選択していきます。
その行動と目的には矛盾がありません。
全体論
人間の内部には分裂や葛藤はなく、全体として目標を追求しようとします。
たしかに意識と無意識は別のものですが、意識と無意識で目的が違うということは「めったに」起こりえません。
「痩せたいけど我慢ができない」という人は、我慢したくないのです。
「自分はやりたいけど、心がブロックしてしまう」という人は、そもそも自分がやりたいとは思ってないのです。
自分と言う人間を全体で考えるというのは、フリーランスが自分を客観視するための、最低限の素養です。
認知論
人間は世の中や周りの人をあるがままに見ているのではなく、自分の思い込みというフィルターを通して見ます。
「人はみな危険」と思う人は、そのように世界が見えます。
実際に危険な目にあったときに、その経験は記憶に刻まれ、その観念は強化されます。
「人は基本的にやさしい」と思う人は、そのように世界が見えます。
実際にやさしくされたときに、その経験は記憶に刻まれ、その観念は強化されます。
たとえ同じ経験をしても、世界をどうみているのかで世界は変わります。
対人関係論
アドラーは、「人間の悩みはすべて対人関係につきる」といいます。
たしかに、誰も人がいなかったら、お金のあるなしは関係なくなります。
魚の釣り方と野草の取り方が分かれば生きて行けそうです。
仕事の苦しみは対人関係そのものです。
孤独についても、よき理解者がいないことの感情ですから、対人関係の問題といえますね。
アドラー心理学では、対人関係をどうするかを考えていくことが、未来をよくすることにつながると考えるのです。
フリーランスの必須条件、「未来志向」
アドラー心理学は、五原則からわかるように、全体的に未来志向です。
過去のことは書いてありません。
親とか環境とか、他人のせいにするようなことも書いてない。
何かしらハンディキャップはあるかもしれないけれど、
その状況で何ができるかを考えます。
生き残れるフリーランスは、お金がない時も、
今あるお金をコントロールして、どのように仕事を獲得していくかに意識を集中しています。
もちろん人に頼るなっとことではないです。
人に頼るのも立派な解決策。
むしろ、人に頼るのをためらう人の方が多いんじゃないでしょうかね。
自分への尊敬を、自分自身に示す
認知論のところでも書きましたが、
人はあるがままに世界を見ることはできません。
自分で解釈した世の中を、世の中だと考えて生きています。
特に自信がないときは、自分が無価値であるような、極端な考え方でいっぱいになります。
これを「ベーシックミステイクス(基本的な間違い)」といいます。
誰でもやりがちなんで、基本的な~ってよんでいるんですよ。
すぴかあやかさんがツイッターで自己評価が低い人の心理を漫画にしています。
自己評価が低いひとのめんどくさい心模様 pic.twitter.com/5s2zO0J9UK
— すぴかあやか(角田綾佳) (@spicagraph) May 9, 2018
ベーシックミステイクスの例です。
谷沢永一さんも言っていましたが、心の調子が悪くなると本も読めなくなります。
起きて、仕事して、納品して、ってできるのはものすごいことです。
まず出発点として、今のままの自分でも価値があることを認識しておくことが、心の健康に欠かせません。
常に足りないと思って努力し続けるのは、苦しいものです。
それより誰と比べるでもなく、自分の良さを冷静に認識してあげることです。
私は、好奇心があること、考えることが好きなことについて、自分を信頼しています。
そのことについて、資格や賞があるわけでもありません。
誰かと比べたわけではありません。
また、うまくいかないときがあっても、自分を否定しないことです。
自分にひどい言葉をかけないことです。
自分を尊敬し、自分自身に直接その態度を示すことが、長くフリーランスをやっていくためにとても大事だと考えます。