契約書の管轄裁判所の決め方はどうするの?フリーランスの法務。

契約書の管轄裁判所の決め方はどうするの?フリーランスの法務。

ノマドワーカーが契約書で気を付けることのひとつ。合意管轄条項

契約書を読むとき、作るときに、「管轄裁判」という言葉が出てきます。
これは、契約についての争いごとが起こってしまったときに、どの裁判所で話し合うかを規定しておくものです。

最近は、本格的に旅をしながらIT系の仕事をする方が増えています。
フリーランスやノマドワーカーはどこで働くかわかりません。
争訟となったとき、どこの裁判所を管轄とするかは、契約時にしっかり確認しておきましょう。

契約書でチェックする項目10個

管轄裁判所の話の前に、どの契約書にも、最低限入れておくべき項目は、以下の10項目があげられます。
こ野中に、この記事でお話しする管轄裁判所の指定も含まれます。

  1. 業務内容・業務範囲
  2. 料金や報酬の支払い
  3. 経費の支払い
  4. 契約期間と更新・解除の方法
  5. 著作権などの知的財産権
  6. 秘密保持
  7. 検収や修正の期間と方法
  8. 瑕疵担保責任
  9. 損害賠償
  10. 管轄裁判所

裁判所が遠いとお金も時間もかかる

民事訴訟法では、原告は、原則として、被告の住所地を管轄する裁判所に裁判を起こすべきとされています。

しかし、第一審に限っては、契約時に当事者の合意によって管轄裁判所を選択すること(管轄の合意)も、民事訴訟法11条1項によって認められています。

現在の、民事裁判の平均審理期間はおよそ6.8ヶ月とのことです(日経新聞2011/7/8)。
その間、手続きが行われる日はおよそ4~5回です。
出頭する場合、仕事は休まなければなりません。
遠方の裁判所で裁判をすることになってしまうと、裁判所に行くために時間や費用がかかります。
弁護士にお願いする場合、その出張費用もかさみます。

例外として、60万円までの金銭の支払いを求める簡易裁判所の少額訴訟事件の場合は、出頭するかわりにテレビ会議を使えます。
しかし、あくまでも、それは少額の場合の例外。

裁判所を選択できるのであれば、できるだけ近くの裁判所を選択しておきたいですよね。

裁判管轄について、契約書の書き方の見本は?

以下、契約書の合意管轄の見本です。
1.まず、お互いの住所が近い場合は、これで問題ないはずです。

第**条(裁判管轄)
本契約に関して生じた一切の争訟は、東京地方裁判所第一審の専属管轄裁判所とする。

2.裁判所名を書かない方法もあります。

第**条(裁判管轄)
本契約に関して生じた一切の争訟は、甲の本店所在地の管轄地方裁判所第一審の専属管轄裁判所とする。

3.140万円以下の事件については、簡易裁判所か地方裁判所かを選べます。

第**条(裁判管轄)
本契約に関して生じた一切の争訟は、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所をもって第一審の専属管轄裁判所とする。

4.例えば東京にある会社と北海道にある会社の契約で、東京地方裁判所を規定すると、北海道の会社に著しく不利です。
折衷案として、以下のように、民法に即して規定する書き方もあります。

第**条(裁判管轄)
本契約に関して生じた一切の争訟は、被告側の本店を管轄する裁判所第一審の専属管轄裁判所とする。

5.双方の住所の中間地点に設定することもあります。以下は、大阪と東京間の法人契約で、名古屋を選択する例です。

第**条(裁判管轄)
本契約に関して生じた一切の争訟は、名古屋地方裁判所第一審の専属管轄裁判所とする。

専属的合意管轄と、付加的合意管轄

合意管轄には、「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」があります。

ややこしい言葉ですが、つまりは、契約書に「専属的合意管轄」というワードを入れておきましょう、ということ。専属的が大事。
専属的合意管轄」と明記しなかったら、裁判管轄を決めてないと解釈されかねません。

このような付加的合意管轄ともとれる書き方では、契約書で指定していない裁判所への提訴もできるんです。
はっきり決めてないと、双方にとって、かえってややこしいのです。

専属的合意管轄とは

専属的合意管轄とは、合意管轄条項で記載した裁判所のみに限定し、それ以外の裁判所への提訴を認めない合意管轄のしかたです。

付加的合意管轄とは

付加的合意管轄とは、合意管轄条項で記載した裁判所のほかに、民事訴訟法に基づいて決められる裁判所への提訴も認める合意管轄のしかたです。

「契約書に専属的合意管轄を書いていれば絶対」じゃない

裁判所は、それぞれの契約書の内容は知りません。
契約書に書いてあるのと違う裁判所に提訴されることも、十分あり得ます。

合意管轄条項と異なる裁判所に訴えが提起された場合は、「管轄違いの抗弁」(民事訴訟法12条)という主張をする必要があります。「管轄違いの抗弁」が認められると、その裁判は、合意管轄裁判所に移送されます(民事訴訟法16条1項)。

管轄が違うのに「管轄違いの抗弁」を主張せず、相手方の訴えに対して反論をしてしまった場合、応訴管轄(民事訴訟法12条)といって、訴えが提起された裁判所に管轄が発生するので注意です。

裁判所から管轄を変えられるときもある

実際の裁判では、裁判所は、極端にどちらかに有利となる合意管轄を認めないこともあります。
その場合、裁判所が適切な裁判所に訴訟を移送します。
以下の2つの法律に基づいて、裁判所が合意管轄を認めなかった判例があります。

民事訴訟法

(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

消費者契約法

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

本記事は、2018年03月28日公開時点での情報です。ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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